はじめに
長いです。目的の情報だけ確認したい方は目次からどうぞ。
75cmの大型ブリキ水槽を入手
古道具屋さんでたまに売っているブリキ水槽。
ワイヤー蓋や細い把手付きのもの、蛇口が付いたものなどタイプも大きさも様々ですが、外国製のものを見たことがないのでおそらく日本独自の形状なのだと思います。
今回、ブリキ水槽の中でもかなりの大物を入手したので、パルダリウムを作ってみることにしました。
(Wcm×Dcm×Hcmと今の規格水槽にはないサイズです)
準備したものと作業の流れ
事前に購入したものは次の通り。
- エーハイム ミニフラット
- ろ材
- 極床 植えれる君
- 極床 造形君
- テラリウムソイル
- ブルカミア
- 軽石
- 溶岩石L・M
- シリコンチューブ(ブラック)
- 分水器
- ワイヤー(硬さのある針金)
- ウールマット
- レイアウト用流木
- 植物・苔類(お好みで)
- バスコーク(水槽用)
- ミストメーカー
- はんだごて
- フラックス
※既に持っていたもの
- ブリキ水槽(古道具)
- 照明&照明スタンド(古道具)
- 不要な新聞紙orダンボール
- 園芸用ネット(100均)
- パネルヒーター
- クリアラッカー(つや消し)
- メラミンスポンジ
- マスキングテープ
- マスカー
- ゴム手袋(フィットタイプ/なければビニール袋で代用可)
必要な素材や作業の流れは通常のパルダリウム・テラリウム作りと大して変わりません。
が、今回使用する水槽はデッドストックの超古道具。蛇口部分の半田が取れてポロっと外れる状態だったりガラス面が曇っていたりしたので、本体の手入れから始めました。
水槽の丸洗い
まずは洗浄から。新品のガラス水槽でもセッティング前に軽く水洗いをしますが、古いものなので丁寧にメラミンスポンジで擦りながらの作業です。
▼出荷時に貼られたと思われる特許シール。古道具の味と思ってそのままにしてあります(注:イッタラのiシールは買ってすぐ剥がすタイプです。)
この後の作業に支障が出るので、洗ったあとはしっかり水気を取って乾燥させます。
ガラス面以外の錆止め(クリアラッカー塗布)
つや消しタイプのクリアラッカーでブリキ剥き出しの底面をムラなくコーティングしていきます。
この時、ガラス面にスプレーがついてしまわないようにマスカーで完璧に保護します。
▼塗布後、乾燥した状態でテスト注水したところ。見づらいですが、水(下半分の色が濃い部分)を弾いて表面張力が生じていることが分かります。
蛇口の半田付け
スプレーの乾燥を待つ間、水槽をひっくり返さないとできない作業をやってしまいます。
まずは外れてしまった蛇口の半田付けから(どこの誰に需要があるのか不明ですがしばしお付き合いください)。
水槽本体(ブリキ)と蛇口パーツ(真鍮)を接合する場合、このタイプの商品で問題ないようです。
フラックスで金属同士の馴染みを良くしてから、温めたコテで半田を溶かしつつ接着していきます。
これを
こうして
こうじゃ
一応ちゃんとくっつきました。
くっついたんですが、再度テスト注水をした時に水漏れを起こしてしまいました。おそらくフラックスの塗り方が不十分でブリキが一部半田を弾いてしまい、僅かに隙間が空いていたんだと思います。
結局は見えない裏側からバスコークで隙間を埋めて事なきを得ましたが、こうなるとバスコークだけで良かったんじゃないかという疑念が湧いてきます。
過ぎたことなので気にせず次へ行きましょう。
パネルヒーター設置(生物を入れる場合)
※生物を入れない場合は飛ばしてください
金属はご存知の通り、ガラスより熱伝導率が優れています。
パルダリウムは水を張ってもせいぜい水深4cm程度だし、底面は薄いブリキの一枚板なので外側(裏面)からヒーターを貼り付けても問題なく温められると判断しました。
マスキングテープで周囲を仮留めしてから、保温を兼ねて水槽用のポリウレタンマットで固定しています。
▼マット貼付前の状態。
※ヒーターはピタリ適温を使用しました。
他の商品は電源コードとの結合部分が結構ごついので、重みで剥がれてくる可能性を考えてピタ適にしました。
不安箇所の補強
水をいっぱいに張らないとは言え、さすがに年代物なので四隅の補強はしておきます。
バスコークを隙間に注入し、おまじない程度に上からマステを貼り付けました。
今考えるとマステ要らないですね。
オアシス(植えれる君)の加工
水槽の内寸を測り、植えれる君をカッターで(水槽にぴったり収まるように)カットしていきます。
このとき、細かい粉が広範囲に飛び散るので新聞紙やダンボールを広めに敷いておくことを強くおすすめします。一度飛び散ると回収が結構大変なので、扇風機やくしゃみにご注意ください!!
両側面と背面の計3面分カットできたら、後で造形材が乗りやすいように表面部分の角を削ります。
大根の面取りのような感じ。
アールはラフにゆるく取った方が、完成した時に“人工感”がより薄れるのでおすすめです。
ウールマット設置&オアシス(植えれる君)の接着
ウールマット(緩衝材兼ろ過能力アップ用)を底に敷き詰めてから、ガラス面に植えれる君をバスコークで貼り付けていきます。
多少曲がったり隙間ができてしまっても結局造形材で隠すことになるので、あまり気にせず貼ってしまいます。
分水器&チューブ取り付け
ポンプ(フィルター)と分水器、分水器とシリコンチューブを事前に接続しておきます。
使用したポンプと分水器は直接の接続ができなかったので、シリコンチューブ(φ13)を追加購入して短めにカットし、間に噛ませてジョイントしました。
※輪ゴムで巻きつけてある白いモジャモジャは少しでもゴミの吸い込みを減らすために取り付けたウールマットです。効果のほどは不明。
ここまで終わったらバスコークの乾燥時間を取ります。数時間で大丈夫だと思いますが、この時は大事を取って一晩待ちました。
チューブの取り回し&ミストメーカー設置
シリコンチューブを、
・土台の通水用(×必要数)
・流木に絡ませる分(×必要数)
・岩間からチョロチョロさせる分×1
・ミストメーカーへの給水用×1
上記の用途ごとに必要な長さにカットします。
取り回して固定する際は、3〜4cm程の長さ切ってU字に曲げた針金を、チューブを抱き込む形で土台に差し込みます。流木など硬い素材には後に造形君で塗り付ける工程で固定するのでそのままでOKです。
ミストメーカーはそのままドボンしてしまうとゴミや濁りを吸い込んでしまい、すぐに使い物にならなくなるので対策として小細工を仕掛けます。
小細工と言っても100均のブラボトルや小さめのペットボトルの下半分に綺麗な水を溜め、その中にミストメーカーを設置し、分水したミストメーカー用チューブがそこに直接向かうように設置するだけの粗末な細工ですが、これで少しでも寿命を延ばすことができます。
▼分かりづらいですがこんな感じです。
低床材を敷く
下から(ウールマット→)軽石→ブルカミアの層状になるように低床をセットしていきます。
これらが前面から見えてしまうと少々不格好なので、手前5センチくらいは隙間を空けておいた方が幸せになれます。
最上面に来るテラリウムソイルは、造形材を塗り付けた後のタイミングで入れる(レイアウト素材の移動でブルカミアが表面に浮いて来るのを防ぐ)ため、ここでは入れません。
※このとき岩と流木の仮組みも同時に行っていたので画像に写っていますが、次の工程の前に一旦取り出しています。
造形材を塗りつける
造形君に水を加え、画像のような状態になるまで練ります。軽く握って水が滴るくらい。
オアシスが結構水分を吸っていくので、若干ゆるいかな?くらいでちょうどいいと思います。(かといって緩すぎると水槽に運ぶ時にポタポタ泥水が滴るので具合を見て調整してください)。
このとき土台にしっかり固定したい流木などは同時に配置しながら作業を行ってください。造形材を接着材代わりに塗り固めていくような感じです。
保護ネット設置
ポンプとミストメーカーをゴミや繊維から大まかに保護するために、周りを100均の園芸ネットで囲っていきます。上からの落下ゴミを防ぐため、さらにウールマットなどを載せておくと安心です。
植物レイアウト&岩組み
一番楽しい工程です!
チューブ設置の時と同じく、カットしてU字に曲げた針金を使って植物を固定します。活着させたいポイントに針金で差し込んでいきます。重みのある植物だと針金が重量に負けて落ちてきてしまうので、結構グッと力を入れて強めに固定して大丈夫です。
そして、前工程で設置した保護ネットを隠すように岩を組んでいきます。
※ポンプやミストメーカーのメンテナンスを想定し、ある程度取り出しやすい組み方にした方が後々楽です!
ソイル投入&注水
ブルカミアで止まっていた低床の層にテラリウムソイルを投入します。アクアリウムのように後ろから手前に向かって斜面を作るようにすると立体感が出ると思います。
生き物を入れるなら、水場と陸地を作る感じで深さに差をつけるなど工夫してみてください。
ソイルを敷き終わったら、苔など底面用の植物を追加して微調整を行います。
※水中に埋もれてしまう位置に苔を敷くと枯れてしまうので、予定水位を確認しながら作業してください。
ポンプ&ミストメーカーON
全体の構造を確認し、OKであればいよいよ注水です!
静かに水を注ぎ入れ、ポンプの電源をONにします。この時にカラカラと音がし続けるようなら水位不足なので、様子を見て水を足していきます。
最初はやはり濁った水が循環するので、詰まりを起こしやすいミストメーカーは2時間くらいポンプを回してから稼働させた方が無難です。
完成!
完成しました!ミストも問題なく動作しています。
植物を入れ替えたり、苔の成長やキノコの自然発生といった変化を楽しみつつ維持していきます:)
ブリキ水槽はご覧の通り密閉型ではないため水位が減りやすいです。土台が乾燥する前に、マメに注水や霧吹きをする必要があるので「やってみよう」と思った方はご注意くださいね。
ちなみにエアコン直下の設置は絶対に避けた方がいいです。いくら水やりしてもどんどん乾燥していきます。
まとめ
古道具と植物(多肉など)の組み合わせはよく見かけますが、パルダリウムは見たことがなかったので作ってみました。
今まで小型水槽の非循環型テラリウムしか制作経験がないので工程がかなり冗長になってしまいました…。慣れている方はもっとうまくやれるのでしょう。私にはこれが限界です:/
正直「ガッツリ生き物を飼う」ことには向かないと思いますが、「完全水棲ではなく、壁を登らず、蓋の穴のサイズよりも小さく、物を持ち上げる力の弱い生き物」だったら飼えるかも、とも思います。
生き物入れてもいいけど…
興味本位で入れてみた小型のセネガルカメレオンやバンパイアクラブ、チョウセンスズガエルなどは見事に一回ずつ脱走しました(目の前で)。吸盤が無くジャンプ力の低いヒキガエル系で、かつレイアウトを破壊する程の重量感が出る前のヤング個体なら何とか飼えるかもしれません。
ただしバスコークやクリアラッカー、針金などを使用しているため、皮膚の弱い両生類にはどうかなという懸念もあります。
アクアリウムとしての使い方もおすすめしません(成分もそうですが、満水にしていると遅かれ早かれ接合部分が破裂しそう)。試される場合は十分ご注意くださいね。